法定相続情報証明制度

相続

制度の概要
平成29年5月29日より、法定相続情報証明制度が始まりました。
この制度は、相続人等が登記所に、一定の書類を提出することで、
「法定相続情報一覧図の写し」という書類が発行されるようになるものです。

これまで相続後の手続きのうち、不動産登記や口座の名義変更等の場合、
都度、戸籍等一式の書類を各所に提出する必要がありました。
戸籍等一式の書類は、場合によっては、かなりの枚数になることもあります。
原則として、その原本の提出が必要とされており、同時並行的に
各所の手続きを進めようとした場合には、その数だけ戸籍等一式の書類を
取得する必要がありました。
これは、数が多くなりかさばることもありますが、
仮に1セット取得するために2,000円かかるとした場合で、
20ヶ所に提出が必要な場合は、2,000円✕20セット=40,000円という費用を
相続人が負担する必要がありました。

この各所に提出する書類に代えられるものとして制度化されたのが、
今回の「法定相続情報証明制度」であり、「法定相続情報一覧図の写し」です。
今現在、すべての金融機関等で対応がされているわけではないようですが、
利用が広がれば、これまでに比べ非常に楽に手続きを進めることが出来るようになります。

必要書類
この法定相続情報証明制度を利用するためには、
まず最初に、登記所に戸籍等一式を提出する必要があります。
もう少し具体的に言いますと、下記のようなものが挙げられます。

・被相続人の戸籍謄本・除籍謄本(出生から死亡時まで)
・被相続人の住民票の除票
・相続人全員の戸籍謄本または戸籍抄本
・法定相続情報一覧図(住所等も記載された家系図のようなもの)

これらの書類を登記所に提出し、登記官の確認後、登記所に保管されます。

利用について
「法定相続情報一覧図の写し」の発行には料金はかかりません。
また、複数枚請求することも可能となります。

つまり、上述した例のような各所の手続きを行うにあたり、
20枚の「法定相続情報一覧図の写し」を請求して発行してもらうことで、
同時並行的に手続きを進めるとしても追加費用が発生しないことになります。

この制度を利用した場合にかかる費用は、
法定相続情報証明制度を利用するために最初に登記所に提出することになる
戸籍等一式を取得する費用だけで済むようになります。

申出をすることができる者
法定相続情報証明制度を利用するための申出をすることができる者は、
相続人のほか、代理人として親族や資格者(税理士、弁護士、司法書士等)です。
そのため、資格者に何かの業務を依頼された場合は、
相続人自身で手続きを行わずとも、制度を利用することが可能となります。
(その場合、別途報酬が資格者に発生する場合があります)
制度の注意点
法定相続情報証明制度の利用は非常にメリットが大きいと思われます。
一方でその中での注意点としては、主に2つ挙げられます。

まず1つは「相続情報一覧図の写し」はあくまで戸籍等一式の書類に代わるもので、
例えば不動産登記を変更する場合には、別途、遺言書や遺産分割協議書が
必要となってきます。
「相続情報一覧図の写し」だけで完結するものではありません。

そしてもう1つは、追加での交付を請求することができる者は、
当初の一覧図提出者に限られることとなり、例えば、
当初の一覧図を相続人Aが提出して、その後に相続人Bが再交付を
請求しようとした場合には、相続人Aからの委任が必要となります。

今後の展望
法定相続情報証明制度は、まだ始まったばかりの制度です。
上述の通り、すべての金融機関での対応がされているわけではありません。
また、税務署に相続税申告を行う際の戸籍等一式の書類に代えることはできません。

しかしながら、この制度創設の背景や趣旨を考えますと、
金融機関については順次対応されていくものと思われますし、
税務署への相続税申告の添付書類として認められるようにも
なるのではないかと考えています。

当税理士事務所では、相続税申告業務を承っておりますが、
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