平成30年度 税制改正大綱

税制

2017年(平成29年)12月14日に2018年度(平成30年度)税制改正大綱が与党から発表されました。
税制改正大綱とは、通常、年明けから行われる国会で審議が行われた後、
3月後半に可決される税制改正のもととなるものです。
従いまして、今回は2018年度(平成30年度)の税制改正大綱に基づいた記載を行いますが、
実際に可決される法案とは中身が異なる可能性があることをご理解ください。
なお、税制改正大綱内の年度表記につきましては和暦が採用されておりますが、
近々改元が予定されていることもあり、以下では西暦表記とさせていただきます。
基礎控除の改正
これまで個人の所得税を計算する際、全員一律に38万円の控除がありました。
これを基礎控除と言います。
2018年度税制改正大綱において、この部分の改正がありました。

基礎控除の金額が38万円から48万円に10万円増額され、減税となります。
ただし、これまでのように全員一律というわけではなく、下記の所得制限があります。
 所得2,400万円以下・・・48万円
 所得2,400万円超 2,450万円以下・・・32万円
 所得2,450万円超 2,500万円以下・・・16万円
 所得2,500万円超・・・0円
つまり、高所得者においては所得控除は逓減もしくは0となるということです。

この改正は2020年1月1日から適用開始となります。

給与所得控除の改正
給与所得者については、その給与額に応じて一定の控除があります。
これを給与所得控除と言います。
2018年度税制改正大綱において、この部分の改正がありました。

給与所得控除は給与額に応じて段階的に控除額が設定されており、
これまで控除額は220万円まで(給与収入1,000万円で頭打ち)となっていました。
今回の改正では、控除額は195万円まで(給与収入850万円で頭打ち)となります。
また、給与所得控除全体をこれまでより10万円ずつ減額する措置がされています。
つまり給与所得者にとっては増税となるわけですが、
上述の基礎控除が10万円増額されたことで相殺される形となっています。

なお、給与収入850万円以上の場合でも、23歳未満の扶養親族がいること等の
一定の要件を満たす場合には、給与収入の額(1,000万円を限度)から850万円を引き、
残った金額の10%を追加で控除することができます。
これにより、給与収入850万円以上の場合でも上記要件を満たす場合には、
増税も減税もない状態となります。

この改正は2020年1月1日から適用開始となります。

公的年金等控除の改正
公的年金等の受給者については、その受給額に応じて一定の控除があります。
これを公的年金等控除と言います。
2018年度税制改正大綱において、この部分の改正がありました。

公的年金等控除は受給額に応じて段階的に控除額が設定されており、
受給額が大きくなっても、その控除額はどこまでも5%ずつ増えていきました。
今回の改正では、控除額の上限を195.5万円(受給額1,000万円で頭打ち)とし、
さらに、公的年金等以外の所得が1,000万円を超えると10万円減額、
公的年金等以外の所得が2,000万円を超えると20万円減額となる措置がされました。

なお、今回の改正で給与所得控除と公的年金等控除の双方で10万円ずつの
控除額の減額がされており、両方の所得がある人にとってはダブルパンチとなります。
それを避けるため、両方の所得があり、給与所得控除後の給与等の金額と、
公的年金等控除後の年金等の金額の合計額が10万円を超える場合には、
各金額(各10万円を限度)の合計額から10万円を引いた残額を、
給与所得から追加で控除できることとされました。

この改正は2020年1月1日から適用開始となります。

青色申告特別控除の改正
個人で事業をしていて、一定の要件を満たして青色申告をしている場合、
65万円を控除できる制度があります。
これを青色申告特別控除と言います。
2018年度税制改正大綱において、この部分の改正がありました。

今回の改正では、青色申告特別控除の金額を原則55万円とし、
これまでに比べて10万円減額する措置がされました。
その上で、次のいずれかの要件を満たせば、控除額が65万円になります。
1.電磁的記録の備え付け及び保存を行っていること
2.申告期限内にe-taxで確定申告書等を提出すること

この改正は2020年1月1日から適用開始となります。

森林環境税の創設
森林環境のための税として新たに森林環境税が創設されます。
税額は1人1,000円で、個人住民税とあわせて納付することとなります。

この改正は2024年度から適用開始となります。

一般社団法人等に対する相続税の見直し
株式会社に個人の資産を移転しても、その株式に対して相続税が課税されますが、
これまで一般社団法人に資産を移転すると、相続税が課税されず、
税逃れに利用されている面がありました。
2018年度税制改正大綱において、この部分の改正がありました。

一般社団法人等で、同族役員の割合が50%超であること等の要件に該当する場合で、
その一般社団法人等の理事が死亡した場合には、その死亡時の一般社団法人等の
純資産額をその亡くなった者を含めた理事の人数で頭割りし、
その金額を一般社団法人等が相続したものとみなして、一般社団法人に対して
相続税が課税されることとなりました。

この改正は2018年4月1日以後発生の相続から適用開始となります。

小規模宅地等の特例の改正
相続税の計算をする際、一定の土地については減額措置があります。
これを小規模宅地等の特例と言います。
2018年度税制改正大綱において、この部分の改正がありました。

小規模宅地等の特例はいくつかパターンがあるのですが、
その中の賃貸事業を行っている建物が建っている土地について、
相続開始前3年以内に賃貸を開始したものが除外されることとなりました。

この改正は2018年4月1日以後発生の相続から適用開始となります。
ただし、2018年4月1日より前から賃貸されていた場合には改正の適用外となります。

所得拡大促進税制の改正(中小企業版)
青色申告書を提出する中小企業者等が、2018年4月1日から2021年3月31日までの間に
開始する各事業年度において、一定の計算をした給与等支給額が前年度比1.5%以上であるときは、
一定の計算をした給与等増加額の15%の税額が控除されます。

また、同前年度比2.5%以上であり、かつ、教育訓練費の増加割合が10%以上であるとき、
または経営力向上計画に従って経営力向上がされているときは、
同増加額の25%の税額が控除されます。